
「モチベーション革命」の解説と要約&あらすじ・内容の説明と感想レビュー
- 更新日:2020/01/26
- 作成日:2020/01/25
「モチベーション革命」とは、2017年に初版発行された本で電子書籍のキンドルで総合部門ランキングで1位を獲得した本です。 テクノロジーの進化や時代の変化がもたらす価値観の移り変わり、モチベーションの源泉について解説した本です。
物欲などの欲望に忠実だった団塊世代よりも上の世代を「乾いている世代」と称し、 今の30代以下で生まれた時から物に囲まれて育った世代を「乾けない世代」と称し、両者の違いについて説明しています。
なぜ残業しない?なぜ飲み会に参加しない?なぜ会社をすぐに辞める?「乾いている世代」からすると理解不能に見える「乾けない世代」の行動。 上の世代の読者はそんな「乾けない世代」を理解する為の取り扱い説明書として読み進めてみて欲しい。
それとは反対に、下の世代の読者に対しては、自分のモチベーションを客観的に理解して、人生に迷いなく生きられるように道標を示してくれます。 そして上の世代も下の世代も、時代に合った強い組織を形成する為に、どのように共存・コラボレーションしていくかに今後の未来が掛かっているのです。
世代間によるモチベーションの違い
出世の為、たくさん稼ぐ為、異性からモテる為、高級料理を楽しむ為、そんな事の為に、自分の人生をほぼ仕事に捧げている上司や先輩を見て、 「自分はこんな上司たちみたいに会社の奴隷になりたくない」と、考えた事はないでしょうか。
実は「何の為なら自分は頑張る事ができのか」という働くためのモチベーションや原動力は、とある世代を境に大きく変わってきているのです。 団塊世代よりも上の世代では、戦後の何もなかった時代は、欲望と共に成功する為に人生を駆け抜けてきました。
金持ちになりたい、大きな自宅を建てたい、高級車に乗りたい、美人の女性と夜を共にしたい、欲望や上昇志向と共に成り上がろうとしました。 「無いモノ」をどうやって埋めていくか・手に入れていくかが最大のモチベーションとなっていたのです。
しかし時代は大きく変わり、30代以下の若い世代は、前述の団塊世代とは大きく違う価値観を持っています。 生まれた時から、物心をついた時からすでに物で溢れ、何もかも全てが揃っている状態だったので、物や地位などをモチベーションにして頑張る事はありません。
だから若者は「会社での出世」「金銭的な成功」というニンジンをチラつかされても走らないのです。 だからといって本当にあなたは、これといった欲望やモチベーションがないのでしょうか?いや、決してそんな事はありません。
人間が持つ5つの欲望
マーティン・セリグマンというアメリカの心理学者が人間の欲望について唱えました。 「達成・快楽・意味合い・良好な人間関係・没頭」の5つです。
団塊世代の人間たちは上記5つのうち、「達成・快楽」の2つを強烈に欲しました。汗水たらして頑張り、高い目標を達成する。 そのご褒美としてマイホーム・高級料理・高級車・美人との関係など、「身体的・心理的・社会的快楽」を味わうのが幸福だと信じていました。
それに対して30代以下の若い世代では、他の3つ、「意味合い・良好な人間関係・没頭」を重要視するのです 「意味のある事」に「好きな仲間たち」と「とことんハマる」ことに価値を見出すのです。金銭的・物理的な報酬より「自分の好き」を追求するのです。
社会は成熟し、テクノロジーは進化しても、人間の身体は旧来のまま進化していません。 しかし人間を動かしている根幹部分のエネルギーである、モチベーションの形は革命的に変化してきているのです
乾けない世代とは何か?
「やる気が起きない」「やる気を起こす事ができない」日々、頑張ってはいるけれど、いまいち頑張る意味が見えてこない。 そんなモチベーション迷子になっている人が多いのではないでしょうか。
旧来の「乾いている世代」と比較しながら「乾けない世代」が誕生した背景と、乾けない世代が持つ 「モチベーションの正体」を明らかにしていきたいと思います。
何もなかった世代と、すでにある世代
上の世代の会社員たちは、立身出世の為なら家族さえも犠牲にする。それが企業戦士としての美徳とされてきました。 必死になって働いて、サービス残業して、お客さんを接待して、疲れ果ててくたびれた姿で自宅に帰ってくる。
そんな姿を家族からは尊敬されなくても、「自分たちが日本を担っている」という自負があった。 「個人」と言う小さな単位ではなく、もっと大きな社会という単位、あるいは日本という単位でものを見つめてきた世代だ。
そんな時代を知らない下の世代。彼らが最も犠牲にしたくないのが「自分の時間」である。 出世する為に行きたくもない飲み会に行くぐらいなら、家で家族との団らんを楽しみたい。気の合う友達と楽しく過ごしたい。
趣味の時間や自分の時間を充実させたいのだ。仕事は絶対ではなく、家族や自分の時間の方が優先度が高いのだ。 そして何より、どうしてそれらの大切な事を犠牲にしてまで、やりたくない仕事を優先しなければいけないのか分からないのである。
自己成長=社会貢献だった上の世代
上の世代は「世の中の空白を埋めるように」働いてきた世代です。世の中に存在していないものを生み出し、収入を増やし、 家の白黒テレビをカラーテレビに変え、電車通勤から車通勤に変えていったのです。
上の世代が幸福だったのは何かを達成したり、生み出していく事が、そのまま同時に社会貢献につながっていたからなのです。 自分の成長が同時に会社の成長となり、さらにはそれが社会全体の成長につながっていくのを実感できた世代なのです。
いわば「乾いている世代」である上の世代の人達は「国」「社会」を動かして支えていくという「大きな枠組み」 を作り上げていくのがモチベーションにつながっていました。
それに対して「乾けない世代」である下の世代の人達は「家庭」「友人」「自分」という、「小さくて身近な枠組み」 を作り上げていくのがモチベーションにつながっているのです。
何故なら、上の世代がある程度の社会を作り上げてしまったので、乾けない世代の若者たちは「すでに作り上げられた社会」の上に立たされているのです。 「大きな枠」はもうすでに出来上がっているから「小さな枠」を大切にして生きていく。
それなのに働き方のルールが昔のまま変わらないから、もう何かを建てる余白が残っていないのにも関わらず、 相変わらず上の世代から「これで戦え!」とトンカチを持たされる。そんな世代間で働く事に対する認識の差異が生じているのです。
社会も経済も数十年前とは大きく激変しています。それでも働き方のルールは改変されないまま。この「ズレ」 を認識・理解しないと下の「乾けない世代」はすべての力を発揮する事ができないのです。
サイゼリアのワインで充分だ
「何もなかった時代」を知らない下の世代。彼らは何かを達成する事にそれほど心を動かされません。 生まれた時からモノに囲まれて育った彼らは「無いものを勝ち得る為の我慢」という上の世代が持つ心理が理解できません。
確かに何か大きな目標を達成して飲む極上のワインは美味しいのかも知れない。でもわざわざ我慢せずに達成する前に飲んじゃっても良くない? ってか、友達とサイゼリアのワインで気楽に乾杯する方が有意義で楽しいんだけど・・というのが本音なのです。
そして大事なことは「上の世代・下の世代」「どちらが偉い・どちらの価値観」が優れている、という話ではなく、 2つの世代では価値観が異なり、それ故にモチベーションの起点がまったく違うという事なのです。
特に上の世代が今の世代とのモチベーションの違いを理解していないと、価値観やモチベーションの持ち方の違いによる不幸が起こります。 上の世代が違いを理解できずに、新しい可能性の芽を摘み取ってしまうという不幸が起こりえるのです。
やりたい事がないのは不幸なのか?
「やりたい事が見つかった人には確かに憧れるけど、それが見つからない人はどうしたらいいの?」と感じている人もいるでしょう。 もしもあなたが、やりたい事がまだ見つかっていないのであれば、厳しい言い方になりますがこれからの時代は生きづらい世の中になるでしょう
上の世代は、別にやりたい事なんてなくても与えられた事をこなして人より良い結果を残せればそれで成功出来ました。 大きな指標や目標は誰かが掲げてくれたので、必死に達成だけを追い求めれば、それだけで幸せだったのです。
しかし昔と違い、現代では「何が楽しいのか」「何がやりたいのか」という事を常に問われ、 それらすべて自分で決定していかなければいけない時代に突入しました。
右に倣えで決められた目標に向かって歯を食いしばって我慢しながら頑張る人よりも、好きなことに夢中でいつも楽しそうな人の方が魅力的になっていきます。 今は好きな事を楽しそうに仕事している人の元に、お金や人が集まってくる時代になってきているのです。
5種類の幸せ
幸せとは、「達成・快楽・意味合い・良好な人間関係・没頭」の5つであるとご紹介しました。 改めて幸せの種類について、もう少しだけ掘り下げ見てましょう。
1:達成
「達成」は与えられた目標を達成したり、自分で掲げた夢を叶えたり、誰にも成し得なかった事を実現できた時に感じる幸せです。
※ただしリーマンショックや不景気の時期を経験した若い世代はこの「達成」に基づいた物理的なポジティブ感情に対して「脆さ」を感じていて、 むしろネガティブな感情が紐付きやすくなっているのです。
2:快楽
「快楽」は簡潔に言うとドーパミンを感じる事で、美味しい物を食べたら幸せな気持ちになれるとか、 好きな人と抱き合う事などで得られるといった幸福感のことです。
※そして「快楽」は刺激に対して脳は次第に慣れてきてしまい、同じレベルの刺激では幸せを感じにくくなってきます。 その為、快楽に対する欲求は際限なくエスカレートしていきやすいという特徴があります。
3:良好な人間関係
「良好な人間関係」は何も大きな事を成し遂げなくても、ただただ自分の好きな人と笑顔で過ごせれば良い、という幸せを指します。 日頃からの付き合いを大切にして、週末の度に地元の仲間たちとワイワイ飲み会をするのが好きな人などは、この思想が強い人です。
アメリカの心理学者マーティン・セリグマンは「良好な人間関係」こそ、人間の幸福の基礎であると提唱しています。
昔の世代は、会社にすべてを注ぎ込むことが一家の大黒柱として家庭を支えるという「家族の良好な人間関係」として機能しており、 そして「会社における良好な人間関係」をも両立させてくれていました。
しかし、そういった生き方に限界がきている時代の中で、社会の歯車としてではない 「良好な人間関係」が昔とは比較にならないほど重要になってきていると言えます。
4:意味合い
「意味合い」は例えば、家のレンガを積んでいる2人の職人がいます。 片方は毎日つまらないと思いながらレンガを積んでいて、もう片方はいつも楽しそうに仕事している。
つまらない人は「毎日レンガを積んでいるだけで変化も刺激もない。肉体労働で辛いし何をやっているんだろう」と愚痴をこぼします。 楽しく作業してる方は「このレンガの家が完成したら何世代にもわたって人が平和に暮らせるようになる。やりがいのある仕事だ」と額に汗を光らせます。
もちろん後者の感じている幸せが「意味合い」です。自分の仕事が誰かに貢献できているという実感や、大切な人の為になっているという実感。 こういった感情がモチベーションの源になるのです。
5:没頭
「没頭」は職人気質の人が多い、日本人が多く持っている幸せの感情です。作業に集中している時や何かに夢中になっている時に幸せを感じます。 これが5つの幸せです。自分が何を幸せと感じるのか、分析してみると自分のモチベーションを引き出す上で有効に働くでしょう。
そして別の本でも「幸せの定義4つ」が提示されています。「幸せとは何か?」という疑問に直面している人には役立つ記事だと思いますので、興味がある人はどうぞ。 「めんどくさいがなくなる本」の解説と要約&あらすじ・内容の説明と感想レビュー
これから若い世代こそが活躍する
「これをやれば成功する」という黄金律がない今の時代では、自分にしか出来ない事を突き詰め、 自分の楽しめる事をお金に換えていける「乾けない世代」はこれからの時代に強いのです。
あなたの中にもまだ目覚めきっていない無数の才能や可能性がまだまだ眠っているはずです。 どんな人の中にもその才能の芽は眠っています。それをいかにして見つけ出し、どんな嵐が襲ってきても真っ直ぐ成長させていけるかどうかです。
幸せの軸である「良好な人間関係」「意味合い」「没頭」の3つを追い求める事が出来れば、モチベーション迷子になることなく、 自分の価値を高めて成長していく事が出来るでしょう。
自分の才能がまだ見つかっていない人は次の記事が役に立ちます。是非ご参考にして頂けますと幸いです。 「あなたの才能をお金にかえる49の言葉」の解説と要約&内容の説明と感想レビュー
好きを「生きがい」に変えていく
さて、今の世代は自分だからこそ作れる「新しい価値」を生み出せる可能性が誰にでも眠っています。 その「新しい価値」は自分が持っている「好き」や「個性」から生まれやすいのです。
そして、さらに話を発展させて自分の「好き」を人生の柱である「生きがい」へと昇華させていく方法について説明していきます。 まずは「生きがい」について説明した図がありますのでご覧ください。※SNS上で一気に拡散され、話題となった図をこちらで和訳しました。

「生きがい」とは、あなたが好きな事・あなたが得意な事・あなたが稼げる事・世界が必要としている事、の4つの点が交わるところに生み出されます。
「好きな事だけで生きていく」ことは図でいう「あなたが好きな事」です。でもそれだけじゃなく、実は「あなたが得意なこと」でもあるのです。 自分が好きな事はいつまでも続ける事が出来るので「好き」から「得意」に進化していきます。「好きこそものの上手なれ」のことわざ通りです。
すると、好きで得意な事は、時間を掛けて他人よりもこだわったり、逆に短時間で他人よりも素早くこなす事ができます。 周りの人から見ると「こんなに難しい事が、この人はこんなに簡単にこなしちゃうんだ!」と感動されるので、そこに価値が生まれるのです。
価値が生まれれば、「何かお礼をさせて」と感謝されます。これが「あなたが稼げること」につながってきます。 さらにそれが、同時に世界から求められるものであれば、それがあなたの「生きがい」へと進化していきます。
世界といっても、それは全世界でなくても、あなたの周囲のコミュニティ程度のサイズでも大丈夫です。 周り(世界)からありがたがられるような事であれば良いのです。
これが真の意味での「好きな事で生きていく」状態であると言えます。好きな事をしている時はいつの間にか時間が過ぎていくもの。 だからと言って好きな事ばかりしている時間が極端に増えたり、「生きがい」の4つのバランスがうまく取れずに、家族や子供を蔑ろにするのは本末転倒です。
あなたにとって、先の図の4つの点がすべて交わるモノは何なのか、見極めていって下さい。
新社会人のあなたへ
もしあなたが新社会人ならば、まずは目の前の仕事に集中することを優先して下さい。熱意を持って目の前の仕事に時間をかけ、「この人にはお金を払ってもいい」 と会社に思ってもらえるだけの仕事が出来るように頑張りましょう。
好きな事で生きていく前に、まずは自分が食べていけるだけの「ライス(飯)ワーク」の足場をきちんと築き上げる事です。 そこからじっくりと腰を据えて「ライフワーク」を磨いていけば良いのです。
「生きがい」の芽を早めに見つけられるに越した事はないのですが、それを仕事にしていく過程で別に焦ることはありません。 「生きがい」を磨いていくという人生は、一生をかけて作り上げていくものです。焦らなくても大丈夫です。
最初はちょっと孤独です
日本が短期間でこれだけ成長できたのは、戦後の日本で「人間がロボットのようになって働く」ことを一度受け入れたからです。 だからこそ、今の日本があるし、今のあなたがある。ありがたくて素晴らしいことです。
しかし、これからはもう誰かがロボットのように感情を殺して働く必要がなくなった時代に突入しているのです。 そうなると自分の強みを磨いて、「生きがい」の為に働くか、やりたい事をやり続けていくかしか選択肢がなくなってしまうのです。
「そんな事したって誰も認めない」「そんな事してもお金にならない」「そんな事したら周りから白い目で見られる」時にはこんな声が聞こえてくるかも知れません。
不思議なことに周囲の人間の誰からもそんな事を言われなくても、自分で自分にそうやって囁いてしまうものです。 それはもしかすると失敗したり傷ついたりするのが怖くて、いつしか自分で無意識にかけてしまった制限なのかも知れません。
「生きがい」を探しているうちに、ついつい「これをやったら称賛される」というように、他人の評価を真っ先に考えてしまう時があります。 しかし他人の評価や、他人の目を気にするような生き方をしないで欲しいのです。それでは「他人の人生」を歩んでいく事になってしまうからです。
でも心配は無用です。あなたが心底楽しそうに没頭し、それが少しずつ形になって成長していく内に、 徐々に周囲の人達は巻き込まれて応援してくれるようになります。
自分だけの人生の道を歩み、たどり着いた地平から、もう一度この世界を振り返ってみると、 どんなピンチもチャンスに変わる、素晴らしい世界である事を実感できるはずです。
モチベーション革命の書評と感想
この「モチベーション革命」は第1章から第4章までの章で構成されているのですが、 第1章をメインで解説させて頂き、ちょこっと最後の方で第4章にも触れました。
そして第2章・第3章は、「モチベーション」という題材ではなく「AI時代の到来にどう立ち向かうか」といった題材であったり、 「強い組織力のあるチームの作り」といった内容だったので、本のタイトルと少しズレを感じたので省略させて頂きました。
サラリーマンの親の背中を見て育ち「働きたくない」と感じたり、子供のなりたい職業で「Youtuber」がランクインしたり、 今の「親の働き方」に憧れている子供や若者世代というのは少なくなりました。これは時代背景による価値観の変化が原因だと思います。
この本を読むまではジェネレーションギャップ(私は若者世代に該当します)を感じていたのですが、 過去の時代背景や、どんな価値観を持って仕事に取り組んでいたのかが分かり、少しは「乾いている世代」を理解できたように思います。
そして恐らく「ゆとり世代・さとり世代」と蔑称の意味を込めて言っている団塊世代以上の方に読んで欲しい本だと感じました。 「今時、飲みニケーションなんて流行りませんよ」「もっと今の若者の価値観を理解して下さい」と言いたい気分になりました。
お互いに価値観の相違から敵対するのではなく、お互いの価値観を「理解する」「受け入れる」寛容さが必要なのだと感じました。 それではまた次回の書籍レビューでお会いしましょう。 最後までご覧いただきまして誠にありがとうございました。
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