あした死ぬかもよ? - ひすいこたろう

「あした死ぬかもよ?」の解説と要約&あらすじ・内容の説明と感想レビュー

「あした死ぬかもよ?」は2013年に初版発行され、25万部の売上を記録しています。著者である、ひすいこたろう氏の著書の中でもロングセラーのヒット本です。 皆さんは「死ぬ」とは何かを真剣に考えた事がありますか?こちらは人生最後の「死」から逆算して生きていく事にフォーカスした本になっています。

「人生最後の日に笑って死ねる27の質問」という副題が付けられており、著者からの27つの質問に答えていく事で毎日の生活が充実する、後悔しないように生きていける。 そんな風に人生や生活に対して何かしらプラスの答えが得られるような内容となっています。

私は本気で「死」を覚悟した

さて、私事で恐縮ですが私は20代後半に脱サラを経験しており、その後は独立してフリーランスのデザイナーとして仕事をしています。 脱サラ直後から、もう二度とサラリーマン生活には戻らないと誓い、万が一この脱サラ計画が失敗に終わってしまった場合は自殺してこの世を去ろうと本気で覚悟を決めていました。

もちろん死にたくなかったので独立直後は文字通り必死になって働いていました。 時間が惜しかったので、汚い話ですがお風呂は3日に1回、食事も短時間で死なない程度に摂取し、睡眠以外の時間はすべて仕事に費やしていました。 一年365日中、恐らく360日以上はそんな風に働いていました。ブラック企業以上の働き方でした。

幸い、今現在も何とか食い繋げているのですが、当時の事を振り返ってみると「地獄のような生活で辛かった」という思いもありますが 「とても内容の濃い充実した一年だった」という気持ちの方が強いです。(でも正直、もう二度とあんな経験はしたくないですが)

その当時の経験から「本気で死を意識すること」と「生活が充実すること」がリンクしている事を私は身をもって知っています。 今回「あした死ぬかもよ?」を読んで、再び「死」を真剣に意識し、生活がもっと充実したものになれば良いな~という思いからこの本を手にとりました。 皆さんにも生活の道標となる「答え」をお持ち帰り頂けましたら幸いです。

簡単なあらすじ

こちらの本はすべて質問形式で内容が構成されているので、物語や、あらすじは存在しません。 あらすじの代わりに冒頭のプロローグ部分の内容に少しだけ触れておきましょう。

本当にやりたい事をやる人生と、本当はやりたくない事をやる人生。あなたはどちらを選びますか? 本当にやりたい事をやる人生を選びたいですよね。

しかし、予言しましょう。

このままの生き方を続けると、人生最後の日、あなたは90%の確率で後悔することになりそうです。 こんなアンケート結果があります。

90%の人が後悔しながら生きていた

アメリカで90歳以上のご老人に「人生を振り返ってみて唯一後悔している事はなんですか?」 と聞いてみたそうです。この質問に対して90%の人が同じ回答でした。

もっと冒険しておけば良かったと。この「冒険」というのは全国各地や世界各国を訪れるといった冒険の意味合いもあるでしょうし、 趣味や習い事、何かやりたい事に「挑戦」するという意味も含まれていると思います。

「今は時間がないから無理」「お金が溜まってからじゃないと出来ない」そんな風に言い訳ばかりで先延ばしにしていたら5年経っても10年経っても達成できない夢や目標かも知れませんよ? 本のタイトル通り「あした死ぬ」としても後悔せずに死ぬことが出来ますか?

「自分は事故になんて遭わない」「詐欺の被害に遭うはずがない」「自分だけは絶対に大丈夫」。 人間は不思議なもので何故か自分は病気にならない、ガンにならない、「まだ死なない」とほとんどの人が思い込んでいるのです。

死を恐れるな!活用しよう

人間も動物も植物もすべてこの世に生まれた時から「100%」死ぬ事が決まっているのです。 死ぬのが怖い人は多いと思います。私も怖いです。でも死を恐れるのではなく「この限られた命を何に使おうか」と死を活用する事で 自分らしく生き生きと情熱的に生きていく事ができます。

人生は、どんな質問を自分に投げかけるかで決まる。と、著者は主張しています。 アップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズは毎朝、鏡に映る自分に対してこう問いかけていた。 「もし今日が人生最後の日だとしても今からやろうとしている事をするだろうか」と。

スティーブ・ジョブズは死をうまく「活用」し、自分自身に対して死を意識できる質問を投げかけ続けていました。 人生最後の日に笑って死ねる為の質問を「あした死ぬかもよ?」の中からいくつか抜粋してあなたにプレゼントしましょう。

質問:どんな制限を自分にかけているだろうか?

私的にとても心に響いた詩が本の中で掲載されていたので皆さんにもご紹介します。 85歳のナディーン・ステアさんという方が人生を終える晩年に書いた 「もう一度人生をやり直せるなら」というタイトルの詩です。

人生をもう一度やり直すとしたら、今度はもっとたくさん失敗したい。 そして肩の力を抜いて生きる。もっと柔軟になる。

あまり深刻にならない。もっとリスクを冒す。もっと山に登ってもっと川で泳ぐ。 アイスクリームを食べる量は増やし、豆類の摂取量は減らす。

問題は増えるかも知れないが、想像上の問題は減るだろう。 私は毎日、常に良識ある人生をまともに生きてきた人間だからだ。

<省略>

何年も先の事を考えて生きる代わりに、その瞬間だけに生きたい。 それぞれの瞬間をもっとイキイキと生きる。

特に日本人は真面目で勤勉で常識的な方が多いと思います。だから余計に「うんうん分かる分かる」と共感できるのではないでしょうか。

また、過去に縛られず、未来を見据えず「その瞬間だけに生きたい」という考え方は大ベストセラーの自己啓発書 「嫌われる勇気」でも「今ここ、今この瞬間を生きる」という内容が言及されています。興味がありましたら是非こちらもどうぞ。 「嫌われる勇気」の解説と要約&あらすじ・内容の説明と感想レビュー

真面目に働いて、定年退職するまでは耐えて耐えて我慢して働いて。老後は悠々自適に暮らそうと考える方も多いと思います。 もしくは将来の年金だって期待できないし、老後の為にせっせと貯蓄して今は節約生活を送っている若者の方々も大勢いらっしゃると思います。

人と違ってもいい。恥をかいてもいい。もっと素直に生きていい。自分を主張してもいい。弱い自分を見せてもいい。 嫌な事は断ってもいい。人に助けを求めてもいい。幸せになってもいい。生きたいように生きていい。

自分の中の制限を取っ払って、自分の「殻」を破って生きていく事だって前述したように「もっと冒険しておけば良かった」ことに該当するでしょう。

100㎞マラソンに出場した友達が驚いていました。42.195㎞のフルマラソンに挑戦した時はゴールの42.195㎞地点で倒れ込んでいたのに、 100㎞マラソンを走っていたら、42.195㎞地点を普通に通過できたと言うのです。

限界は自分で決めているのです。ならば制限を外すのは自分自身。勇気さえあればそんなに難しい事じゃありません。 では、最後に質問です。

あなたが死ぬ前に後悔しそうな事は何でしょうか。 それはどんな制限を自分にかけているからでしょうか?ノートに書きだしてみて下さい。

後悔なく生きる

やれる可能性がある奴が努力しないのを見ると、胸ぐら掴んで「俺と変われ」と言いたくなる。

※23歳で白血病で亡くなった悠季くんが生前に残した言葉

死ぬ覚悟ができて初めて人は自由になる。

※英語のことわざ

死ぬ気でやれよ、死なないから。

※杉村太郎「アツイコトバ:中経出版」

質問:あなたが生きることで幸せになる人はいますか?

ソフトバンクの孫正義さんも「死」と向き合う事で自分の人生を大きく変えた人物であると紹介されています。

ソフトバンク創業時は3人だけだった従業員が125人に拡大し売上高が45億円にまで成長した頃、 突然の病に倒れました。当時20代の半ば。病名は慢性肝炎。肝臓ガンへ進行する可能性の非常に高い状態で、死亡リスクの高い重病に掛かりました。

医者から「長くても5年持てば良い方」という余命宣告を受けました。 「こんなに勉強して、頑張って会社を起こして、必死で働いて、あと5年の命。俺の人生は一体なんだったんだろう」こういう思いで毎晩病室のベッドで泣いていたそう。

そんな入院生活の中で「龍馬が行く」という司馬遼太郎の本と出会います。坂本龍馬は28歳で脱藩し、33歳で暗殺されるまでの5年間で日本を大きく変えています。 5年で革命を起こした坂本龍馬の人生を知った孫正義さん。

「5年もあれば相当大きな事が成し遂げられる。くよくよしてる場合ではない。もっと大きく構えないとダメだ。」 そう思うキッカケになったようです。

もしも余命が残り5年だとしたら

家もいらん。車もいらん。物欲は全部なくなった。本当に欲しいものは何だ?
─────生まれたばかりの娘の笑顔が見たい

それだけでいいか?
─────家族みんなの笑顔が見たい

それだけでいいか?
─────いや、社員の笑顔も見たい

それだけでいいか?
─────いや、お客さんの笑顔も見たい

そうだ。俺はみんなの笑顔を生み出す為に残りの5年の命を捧げよう。 孫さんは真剣に死と向き合って人生の目的が明確になりました。目的が定まった時、人の芯はブレなくなります。

地位・名誉・財産を捨てた先に残るもの

余命5年と宣告されて、この命を使って一番やり遂げたい事は名誉でも財産でもなく、大切な人の笑顔を生み出す事だという、 生きる目的に気付いた孫さん。人は最後の最後には「人の為になる事をやりたい」と心の奥底にある思いが浮上するようです。

そうした中、3年間の闘病生活を送った後、画期的な治療法が発見されて孫さんは無事に重病を克服されました。 では、質問です。

最近、どんな事で人から感謝されましたか?どんな事で「ありがとう」と言われましたか? あなたが生きる事で幸せになる人はいますか?

孫さんのように大勢でなくても大丈夫。一人でいいんです。 誰を笑顔にしたいですか?貴方ができる範囲内でどんな喜びを生み出せそうですか?

「これまで」の過去の事はもういい。大切なのは「これから」です。

質問:今日飲むお茶が最後のお茶だとしたら何が変わる?

鹿児島にあるお寺に訪れた時、住職さんがこう言いました。

「あなたにお茶を注がせて頂くのは、きっと今回で最後。だから心を込めて淹れさせて頂きます。 もしも宜しければ今回の人生でお茶を飲むのは最後なんだと思って飲んでみて下さい。」

そういう風に言われてしまうとお茶の飲み方が変わります。香りを楽しみ、色の美しさに感動し、味をしっかり噛みしめながら飲むでしょう。 お茶を一口飲むと、幸せがゆっくりと体の中に広がってゆく。それが人生で一番おいしいお茶でした。

目の前の我が子と一緒にいられるのは今日が最後かも知れない。旦那さんが会社に行くけど「いってらっしゃい」と言えるのは今日が最後かも知れない。 この食事が最後かも知れない。今日という一日が最後の日かも知れない。

私たちは明日もあると思っているし、来年も生きていると思っている。20年、30年、40年、生きていると思っている。 それが当たり前だと思っている。当たり前だと思った時、人間は感謝する事を放棄してしまう。

ディズニーランドの一期一会

ディズニーランドで働いているスタッフも「これが最後」という一期一会の精神で働いているんだそう。

アトラクションを説明するスタッフは一日に何度も同じ説明を繰り返す訳なので、普通だったら面倒くさくもなるでしょう。 しかし、「このお客様がディズニーランドで遊ぶのは、これで人生最後かも知れない」と考えたらどうでしょうか。

1985年に「日本航空123便墜落事故」と呼ばれている飛行機の事故がありました。その中にディズニーランドで遊んだ後に、乗り込んだ乗客もいたのだとか。 その時の飛行機事故の記事や写真がディズニーランドのスタッフルームの壁に貼られていたそうです。

名古屋のとある踏切

名古屋に「開かずの踏切」と呼ばれた踏切がありました。名鉄とJRが交差する踏切で、長い時は15分間も踏切が閉まりっぱなし。 友達がその踏切を一度通った事があるのですが案の定15分ほど足止めを食らってしまい、ものすごくイライラしたそう。

それから数年後。例の開かずの踏切が取り壊され、無くなる事を新聞で目にしました。もう二度と通る事が出来ない踏切だと思ったら、 友達は「あの時、15分待って良かった」と感じたらしいです。

これが最後だと思ったら、15分間も待たされる踏切にすら喜びの感情が沸いてくるんです。さて、質問です。

今日がお別れだと思ったら、嫌いな人だって少しは許せませんか?今日が最後の仕事だと思ったら、手を抜きますか? 今日が最後だと思ったら子供を感情任せに叱りませんよね?今日が最後だと思ったら愛する人へ気持ちを伝えませんか?

これが人生で最後の挨拶、最後の出社、最後の電話、最後の読書、最後の食事、最後のキス、最後のサヨナラ、最後のごめんなさい、最後のありがとう。 そんな風に「これが最後」と思って、いつも「今」に「心」を込めて生きていきませんか?

あした死ぬかもよ?の書評と感想

日本は長寿大国であり、現在の平均寿命は80歳を超えています。今からたった数百年前の江戸時代の平均寿命は30歳ほどでした。 もしも現代で30歳で亡くなったとすれば「若くして亡くなられて不幸だ」と言われる事が多いです。

では江戸時代に生きた人々はみんな不幸なのか?と言うと決してそんなはずありません。 「今」を本気で精一杯に生きていれば年齢に関係なく、幸せな人生だったと死ぬ時に思えるのではないでしょうか。

「もっと冒険しておけば良かった」序盤でご紹介した90%の人が後悔している事です。 「冒険」とは、世間体で生きるのではなく、他人の目の中で生きる事でもなく、自分の本当の気持ちで生きることだと思います。

「夢」「目標」「使命」どれも素晴らしい物ですが無理して持つものではありません。人の価値観に従って夢をかなえたところで誰の人生でしょうか? あなた自身の本心で生きることが最初の第一歩です。

「あした死ぬかもよ?」の中で「何か【感】じたら、すぐに【動】くこと。その先に【感動】がある」という言い回しが繰り返し何度か登場します。 本を読んで終わり、何かを感じて終わり、にするのではなく何でもいいので必ず「行動」に移してください。行動しなければ何も人生は変わりません。

私が実践していること

鹿児島のお寺の住職のお話をしました。「お茶を飲むのはこれで人生最後だ」と思ってお茶を飲む事。 私はこの本を読み終えてから、食事中にテレビを見たり、音楽を流したりする事をやめました。

「この食事が人生最後の食事になるかも知れない」と思うようにして、 考え事や悩み事などを頭の中で思い浮かべる事も極力避けるようにするのが重要ポイントです。 なるべく目の前の食事にだけ五感を集中するようにしています。

するとどうでしょう。お茶が、ご飯が、おかずが、以前よりも美味しく感じるようになりましたし、食事の有り難みを毎回噛みしめるようになりました。 心の奥底から「ご馳走様でした。本当に美味しかったです。ありがとうございました。」と思えます。

さらに「当たり前に食事が出来る事は本当に幸せな事なんだ」と感謝の気持ちも芽生え、以前よりも人生の幸福度は確実に上がりました。 皆さんも騙されたと思って実践してみて下さい。必ず幸福度が上がります。

さて、今回は27の質問の内、私が良いと感じた質問3つを厳選してご紹介させて頂きました。 私の書評を読んで人生の道標となる「答え」を得る事が出来ましたら幸いです。 それではまた次回の書籍レビューでお会いしましょう。 最後までご覧いただきまして誠にありがとうございました。