すぐに使える行動心理学 - 植木理恵

「植木理恵のすぐに使える行動心理学」の解説と要約&内容のネタバレ説明と感想レビュー

「植木理恵のすぐに使える行動心理学」はフジテレビの「ホンマでっか!?TV」のレギュラーメンバーとしてご活躍されている人気心理学者、植木理恵さんの著書です。 2012年に宝島社より初版が出版されました。

本のタイトルにも「すぐに使える」と銘打っているように、 相手の心理を「読み解く」「見抜く」「操る」などの心理テクニックと、恋愛や仕事の場面で実際に使える心理テクニックも紹介しています。

はじめに(前書きと注意事項)

他人の心がいとも簡単に読めたのなら、とても便利なことでしょう。 恋愛で悩むこともなくなりますし、仕事での交渉も思いのまま操ることが出来るようになります。 いわゆる「駆け引き」に頭を悩ませる生活から離れられるようになります。

相手が発する言葉やしぐさ、態度や行動から他人の心を少しだけ、読み解くことをアシストしてくれる便利な道具。 それが「行動心理学」です。

「行動心理学」を通して相手が何を考えているのか、相手はどういう人物なのか、自分は相手からどう思われているのか、 それらの事を、この本では詳細に解説しています。

すべてのトピックと内容は根拠となるデータに基づいて導かれたものです。実験・観察・測定・統計といった科学的根拠にを重視しています。 根拠のない「偏見」は紹介していません。ただし例外もありますし、人の心や行動に「絶対」はありません。

しかし、リアルの現実世界において「その可能性が極めて高い」言葉や行動を知るだけでも大きなアドバンテージになる事は確かです。 あなたのコミュニケーション能力の向上や、円滑な私生活が送れるように、人生を豊かにする一助となれる事を願っています。

行動心理学を使って、人を操る事は可能なのか

心理学の専門用語にSR理論があります。これは「Aの刺激を与えればBの反応が返ってくる」という理論です。 これを逆に考えてみれば「Bの反応が欲しければAという刺激を与えてみる」という事になります。

いくつか公式を当てはめた例を挙げてみます。「B:相手を説得したい時 → A:食事中に話しかけてみる」 「B:相手から好感度を高めたい場合 → A:相手に似せた外見を装う」「B:本音を聞き出したい時 → A:という事は?と切り出してみる」などです。

これらのBという刺激を与えれば、Aという反応が返ってくる可能性が高まるのです。 必ず期待した反応が100%返ってくる訳ではありませんが、うまく使えば他人を操る事もある程度は可能であると断言できます。

※あまり相応しい例ではないかも知れませんが、新興宗教の現場では信者の心理や行動を操ったり、洗脳する為に、行動心理学を巧みに利用しています。 最初は少ないお布施でも大喜びしてみせますが、次第にわざと喜びを表現しないようにして、より多くのお布施が得られるように「リアクションも計算している」のです。

第1章:相手の心理を読み解く

第1章では相手の心を「読み解く」心理学テクニックを紐解いていきます。本のサブタイトルにある通り「すぐに使える」ものや、 誰が見ても「わかりやすく」判断ができるもの、「役に立ちそうなもの」を厳選してご紹介します。

第1章 - その1:自分に自信がない人は「普通」と答える

日本人は外国人と比べて、ハッキリと意見を言わない傾向にあります。 仕事の現場でも「イエス・ノー」とはっきり言わない日本人は、外国人から見ると不思議に見えます。 また、会議をしても「では、会社に持ち帰って検討させて頂きます」といって、日本人はその場で判断を下せない事も容易に想像できると思います。

これは「ホンネと建前」を使い分ける日本人ならではの「文化として」のコミュニケーション術なので、あやふやな返事しかしない事が一概に悪いとは言えません。 しかし「文化として」ハッキリした意見を言わないわけではないケースも存在します。

例えば、料理の好みを聞かれた時に「分からない」と答えたり、料理の味の感想を聞かれた時に「普通」や「まぁ・・・」などと答える人です。 こういうケースは「ホンネと建前」を使い分けて発言している訳ではないですよね?明確な回答をしない人々に共通するのは、 自信がないという事です。

自信の有無を見分ける方法

コロンビア大学で行われた実験のお話です。まず被験者たちに性格テストを行い、 自信がある人と自信がない人のグループに分け、それぞれのグループに25個の質問を投げかけました。

すると自信のない人たちのグループでは、イエス・ノーがはっきりしない、どっちつかずの回答を返す人が多いという結果が表れました。 さらに、自信がある人のグループでは回答に3.8秒しか掛からなかったのに対し、自信がない人のグループでは4.5秒も掛かったのです。 1秒に満たない数値ですが、ワンテンポ遅いイメージです。

この実験結果が示すのは「自信がある人:回答内容が明確・回答速度が速い」「自信のない人:回答内容が曖昧・回答速度が遅い」という事です。 手始めに身近な人に何か質問をしてみて下さい。ハッキリとした答えで即答したなら、相手は「自信がある」という判断ができるのです。

ただし、あなたが相手にとって非常に魅力的にうつる異性だった場合、相手の反応が鈍くなるのは自信の有無に関わらず、 その他の要素が大いに影響を及ぼしているので、そういうケースでは上記の方法は有効な手法とはなりえません。

自信家に変身できる方法

相手が自信家であるのか、そうじゃないのか。それを判断できたところであまり役に立つ場面は多くありません。 こちらの行動心理学をご紹介した本当の意味はここからです。

冒頭でSR理論をご説明しました。「Aの刺激を与えればBの反応が返ってくる」という、人を操るテクニックでしたよね。 これをそのまま当てはめて、他人ではなく自分自身を操るのです。「B:自信を持ちたい → ハッキリと明確に答え、尚かつ素早く回答する」

自信がない人は、自信がある人たちの特徴を真似し続けると、自分にも自信がみなぎってくるのです。 もしくは「自信家になりたければ自信家たちのグループの中に飛び込んでいけ」とも言えるかも知れません。

第1章 - その2:脚を開いて座る人は心も開いている証拠

人は嘘をつく時、言葉を巧みに操り、作り笑顔やウソ泣きなどを駆使して表情を偽ります。 しかし言葉や表情は嘘を操る事が出来ても、身体にまで気を回せる人は極めて少ないでしょう。 身体には心の本音が正直に表れやすいという事です。今回は脚に注目してみましょう。

長時間にわたって座っている体勢を維持している時、人は無意識に自分にとって一番ラクで落ち着く体勢をとります。 そして一人の人物がとる体勢は基本的にひとつです。時折、姿勢を変える事はありますがベースの体勢は同じです。 では、それがその人の性格を表していると考えるのも、ごく自然な事です。

アメリカのブレイザー博士が行った実験です。白人女性1,000人を対象に座っている時の脚の状態とその女性のパーソナリティとの関連を分析しました。 それによると10種類の脚の組み方が個人の性格的特徴と関連しているということが判明しました。

足をぴったり閉じて揃えて座る人は秩序欲求(整理整頓・系統化・規則やルール)が強く、脚を中央付近でクロスさせて座る人は養育欲求が強い。 そして膝を開いて「逆ハの字」座っているで人は男性に対してちょっとユルいという事なのです。

その時々の心理状態が脚に反映されやすい

忘れてはならないのが脚の組み方が「性格」をただ表しているだけではなく、その時の「心理状態」を顕著に表すという事です。 会話中に足を開いている人は、そのお喋りを楽しんでいる事の表れ。逆に言えば、足を閉じていると相手の話に興味がないという事。 さらに退屈すると、足を前に投げ出したり、頻繁に組み替えたりするようになります。

ブレイザー博士の研究結果と合わせて考えると、足の開き具合は心の開き具合、ということになります。この傾向は特に女性に顕著に表れるようですが 男性にも当てはまります。合コンの席で空いての足の様子をチェックして、脈アリかどうか判断してみると良いでしょう。

第1章 - その3:女性のぶっちゃけトークは触ってもOKのサイン

ジェラード博士はフロリダ大学に通う18~22歳の学生380人を対象にアンケートを行い、 両親・親しい同姓の友人・親しい異性の友人、のそれぞれが対象者にどれぐらい接触しているかを調査しました。

その結果、女性被験者の自己開示量(自分の意見をありのままに話す量)が多ければ多いほど、異性の友人に多く触られている傾向があると判明しました。 女性が男性との会話でぶっちゃけトークをする時、その女性は話し相手の男性から「身体に触られてもいい」と多かれ少なかれ考えている、という事になります。

しかし疑問が1つ、この実験はアメリカの学生を対象にした実験なので、 欧米人と比べてシャイだと言われている日本人にも果たしてこの結果は当てはまるのでしょうか。

日本とアメリカの学生240人を対象に、ジェラード博士の実験とほぼ同様のアンケート調査を行ったバーンランド博士は日本人の接触行動が アメリカ人の約半分と少なかったという事を発表しました。

こうした違いを生んだ背景には日本人の国民性が大きく関わっています。日本人は「本音と建前」を使い分け自分の内面を見せない傾向にありますが、 相手の体に触れる行為は、言葉と違って意味を曖昧にすることが出来ません。だから日本では非言語的な伝達手段が発達しなかった、と考えられています。

日本のボディタッチは強烈なメッセージ性を含んでいる

逆に考えてみると、日本人にとっての身体接触によるコミュニケーションは欧米のそれと比べて、強烈なメッセージ性を持っているとも考えられます。 特に男女関係の場合、身体接触がOK = その先もOKということも十分に考えられるかも知れません。

勿論これらの実験結果はあくまでも「触っても大丈夫かも」という目安です。しかし恋愛スキルとして心に留めておくのも悪くないはずですよ。 本音を話せる相手というのは少なからず、相手に対して心を開いているのは確かなのですから。

第2章:相手の心理を見抜く

第2章では相手の心を「見抜く」ことに着目しています。相手が自分に対してどういった感情を抱いているのか、 「行為を寄せているのか」はたまた「嫌悪感を抱いているのか」の指標となる「相手を見抜く」テクニックをご紹介します。

第2章 - その1:遠く離れて座られると嫌われている可能性アリ

まず結論を先に話しますと、2人の間の物理的な距離がそのまま心理的な距離に比例しています。 人は本能的に、苦手意識のある人や生理的に嫌悪感を抱かせる相手から本能的に距離を取ろうとします。

カリフォルニア大学のデール・ロット博士が行った実験はまさにこの考えを実証するものでした。 事前に好きな位置に椅子を動かしてかまわないと告げた上で、互いに向き合ってお喋りをさせました。

すると、気楽に話せる相手の場合は椅子を近づけたのに対し、苦手意識のある相手の場合は椅子を後ろにずらす人が多く見られたのです。

もしあなたの前に座っている人があなたに好意を寄せていたなら、恐らくテーブルに身を乗り出してくるでしょうし、 反対にあなたが嫌われているなら、相手は椅子をひいたり、上体を反らして距離をとろうとするでしょう。

パーソナルスペースを見極める

ちなみに、こういった「これ以上は自分のスペースに入ってきて欲しくない」というエリアをパーソナルスペースと呼びます。 このパーソナルスペースは人それぞれに適切な範囲は異なっています。さらに相手によっても範囲が変わります。 恋人同士や親しい友人といる時はパーソナルスペースが狭くなりますし、公共の場にいる時や嫌いな人と一緒の場合は広くなります。

パーソナルスペースは一般的に外向的な性格の人は広くなりやすく、内向的な人は狭くなりやすいです。 また、嘘をついている時は、後ろめたさも手伝って通常よりも範囲が広がって、距離を取りたがる傾向があります。

第2章 - その2:相手の女性の食が細いと好かれている可能性大

南アラバマ大学のクリステンセン博士は98人の大学生を集め、半数の学生には幸せな場面を想像させ、もう半分の学生には悲しい場面を想像させる実験を行いました。 続いてそのまま学生たち全員に食事を摂らせたところ、悲しい想像をした人の方が、幸せな想像をした人よりも半分以上も低い食欲値を示したのです。

つまり人は不快な気分になると食欲が低下する傾向にある事が分かりました。 そういえば私も思い当たるフシがあります。確かに落ち込んでる時や、グロいシーンを見て不快な気分の時は食欲が低下した経験があります。

もし、今現在ダイエット中の人は悲しい場面を想像したり、不快な映像を見ると食欲が落ちて ダイエットが成功しやすくなるかも知れませんよ。その分、食事は楽しくなくなっちゃうでしょうけどね。

気分が普通の状態なのに、食欲が左右される場面

食欲の低下は、別の心理状態の場合でも起こり得ます。それは気になる相手といる時です。 心理学者のブリナーとチャイケンによる実験で、女性は男性と一緒に食事する時、相手が女性の時より無意識に食べる量を減らす事が分かりました。

さらにその男性に対して魅力を感じている場合、さらに食が細くなる傾向が顕著に表れたというのです。 これは気になる男性に対して自分の姿をよく見せようとする行為で心理学用語で「印象操作」と呼ばれます。

第2章 - その3:相手の肩が斜めに落ちていたら行為を抱かれている

これを読んでいるあなたが女性の場合、意中の男性を前にした時、彼の姿勢を観察してみてください。両肩が地面に対して平行になっていませんか? もし相手の男性の両肩がそうなっているのなら、残念ながら彼はあなたに対してそれほど好意を寄せていないと言えます。

そうではなく、どちらかの肩が下がっている場合は、おめでとうございます!彼はあなたに対して行為を持っている可能性が高いです。 これを示す実験がカリフォルニア大学のアルバート・メラビアンという心理学者によって行われました。

男子学生を集めて「あなたがとても大好きな人の事を想像してください」と言ったのです。 すると男子学生の多くは、不思議なことにどちらか一方の方が下がったのです。つまり、両肩が地面と平行ではなくなったのです。

肩が下がるという事はそこの力が抜けるという事。もしあなたの目の前で男性の方が下がっていたとしたら、 あなたが彼にとって肩を張らずに自然体の自分をさらけ出せる相手、または警戒しなくてもいい相手であると言えるのかも知れません。

肩が下がるのは男性だけの特徴

この「好きな相手を前にすると方が下がる」という現象は男性のみに当てはまります。いいですか、男性のみに当てはまります。 大事な事なので2回言いましたよ。面白いことに女性の場合では男性と正反対の結果が出ています。

女性の場合、好きな相手を前にしても方が下がる事はありません。むしろ「とても嫌いな人のことを想像して下さい」と言われた時に方が下がる傾向にあります。 女性が嫌いな人にことを想像すると、ゲンナリして姿勢も崩れてしまうという事でしょうか。

女性は好きな人の前では特に美しくありたいもの。一方の肩が下がってしまうよりも両肩をしっかり張っていた方がきれいに見えます。 大好きな男性の前だと肩を下げるどころか無意識のうちに姿勢を正してしまうのかも知れません。

好意を持っていれば自然と身を寄せ合う

ところで人間には好きな相手を前にすると、自然と体を相手の方に向けてしまう傾向があります。仲の良い恋人同士は自然と身を寄せ合いますよね。 心理学では、これをブックエンド効果と呼びます。このブックエンド効果によって男性は好きな相手の前では姿勢が崩れやすいのです。

「目は口ほどにものを言う」と言いますが、この場合は「肩は口ほどにものを言う」わけです。相手がシャイな性格であまり愛情表現を言葉でしてくれなくても、 肩が好きだという気持ちを無意識のうちに表現してくれているのです、

植木理恵のすぐに使える行動心理学の書評と感想

いろんな本を読んでいて、たまに出くわすハズレ本の中には「著者自身の偏見・根拠のない意見・自己主張」が多く含まれるものがあります。 「いやいや、それはアンタがそう思い込んでるだけでしょ?上から目線でその意見を押し付けてくんなよ」みたいな感じの内容です。

それい比べて、こちらの本は様々な実験や科学的な根拠を基にして作られた本というだけあって、内容は信頼できるのかな、と感じました。 ※ただし、昔の常識が今の非常識になる事も多いのですべて鵜呑みにするのも良くないと思います。あくまでエンターテイメントとして楽しみました。

そして著者が女性だからなのか、はたまた食いつきが良いからなのか「恋愛で役立つ心理テクニック」に内容が傾倒しているように思いました。 思春期の女子中学生や女子高生が読めばすごく楽しめるんだろうなという印象です。

しかし恋愛だけじゃなく人間関係やコミュニケーション全般に転化して、ビジネスの現場でも役立てる情報もたくさん載っていたので、 読んで良かったと思える本でした。植木理恵さんの別の本も是非読んでみたいなと思える内容で私的には満足でした。

行動心理学は実生活のいろんな場面でも役に立つ知識です。 それではまた次回の書籍レビューでお会いしましょう。 最後までご覧いただきまして誠にありがとうございました。